これからの本屋読本
内沼晋太郎
これからの本屋読本
NHK出版/1600円+税/978-4-14-081741-4
◎はじめに
 本が好きで、2003年、新卒で入社した会社を2ヶ月で辞めて、フリーターになった。なんとか本の仕事で食べていけないかと考えていた。今年は2018年なので、それから一五年が経ったことになる。
 いまは東京・下北沢で「本屋B&B」という四五坪の新刊書店を経営している。「B&B」というのは「BOOKS & BEER」の略で、店内でビールを飲むことができる。また、毎日イベントを開催していて、平日は毎夜、土日祝は昼と夜の2回、さまざまなゲストを招いて、平均で五〇人、最大で一〇〇人ほどの人たちが集まる。
 自分の店以外にも、「NUMABOOKS」という屋号、「ブック・コーディネーター」という肩書で、本と人との出会いをつくる、さまざまな仕事をしている。一五年前のぼくにしてみれば、たいそう幸運なことだ。行政からあらゆる業種の民間企業まで、本に関する稀有な相談事が、主に業界の外側からやってくるようになった。新刊書店の経営者で、古本屋の社外取締役でもあり、昨年には出版社もはじめたので、内側の事情も複数の角度から痛感できるようになった。ときにプレッシャーに押し潰されそうになりながらも、携わらせてもらえることが増えていくのは、個人的にも大きな喜びとなっている。
 本書は、本の仕事をしながら、本屋についてこの一五年間にわたってぼくが調べ、考えてきたことを、いま、本と本屋を愛する人たちに伝えておきたいと思って書いた本だ。
 昔ながらの本屋がきびしい。背景にはもちろんインターネットとスマートフォンがある。一方で、小さな本屋をはじめる人が増えている。これは日本特有の現象ではなく、どうやら世界中の、特に読書人口が多い先進国では共通する流れのようだ。必ずしも儲かりはしない。けれど、本を愛する人が、本を愛する人のために開く。そこには大抵、これからの時代に継続していくための、従来の本屋にはない新しいアイデアがある。
 本書はそのような、これからの小さな本屋像について知りたい、考えたいという人に向けて書いている。紹介している事例は日本国内のものが中心だが、隣国の韓国や台湾のことにも少しだけふれた。日本語で書いてはいるが、前提とする状況が似ている国の、世界中の同志たちに役立つ本にすることを目指した(翻訳版が出ればだけれど)。
 本書で明らかにしたいことは三つある。本の流れに沿って説明する。
 一つ目は、本と本屋の魅力。なぜこれほど厳しい、儲からないと言われながらも、皆が本屋に愛着をもち、続いてほしいと願ったり、自らはじめたりするのか。あらためてそれを明らかにしたい。まず、客の視点から整理する(第一章)。次に、そもそも本とは何であるのかを紐解いたのちに(第二章)、それを扱う本屋の視点から考える(第三章)。
 二つ目は、本を仕入れる方法。小さな本屋を開きたいという情熱をもった個人がこれだけいるのに、その方法についてはなぜかまとまった情報がない。それを網羅し、明示したいと思う。流通の事情は各国で異なるので、このパートだけは日本ローカルの話だ。紙もグレーに色分けして、いわゆる「別冊」のつもりで書いた。必要な人だけ読んでほしい(別冊)。
 三つ目は、小さな本屋を続けるための考え方。ここまでを前半の基礎編とすれば、ここからは後半の実践編といえる。まず小売業としての本屋について解説する(第四章)。そこから、本屋で生計を立てていくための「ダウンサイジングする」(第五章)と「掛け算する」(第六章)という二つのアプローチを挙げ、その実例としての鼎談を収録する(Talk)。その後、必ずしも本屋で生計を立てない「本業に取り込む」(第七章)と「本業から切り離す」(第八章)という二つのアプローチについて書く。最後に、ぼく自身のケースを紹介する(第九章)。
 扱う対象の大きさに対して小さな本ではあるが、実務の傍ら書いたこともあり、執筆には丸3年かかった。本屋の書いた本なんてもう読み飽きたよ、という声が聞こえる気もする。けれど本書はたぶん、網羅性と実用性という点において、過去のどんな本とも違っている。
 不十分であっても、見渡せる地図が、立ち戻れる教科書があるべきだ。若輩者が畏れながらも目指したのは、そういう本だ。

(本書より引用)
◎試し読み


上の「はじめに」のほか、目次と、第1章がまるごと読めます。
※右下の四角いアイコンをクリックするとフルスクリーンになります。
◎販売してくださる方へ
本書『これからの本屋読本』は、小さな本屋をはじめたい人に向けて書かれています。そのため、出版取次(卸)の仕入口座を持っていない、どんな小売店やイベント販売の方であっても、気軽に本書を仕入れられるよう、著者の会社(NUMABOOKS)にて直取引の窓口をご用意することになりました。本書の販売をしていただける個人・法人の方は、下記の要領でお申し込みください。

▼出版取次の仕入口座をお持ちの方は、取次経由での注文をお願い致します。口座がない方のみ、著者(NUMABOOKS)から直接仕入れられる仕組みとなっております。

▼条件は冊数に応じて異なります。全冊、著者サイン本となります。
1~5冊 買切:80%
6~9冊 買切:75%
10冊以上 買切:70%

▼ご希望の方は、こちらのページのフォームに記入の上、ご注文ください。
◎トークイベントにいらしてくださる方へ/開催してくださる方へ
全国の書店をまわって、刊行記念のトークイベントを開催しています。
開催にご興味を持ってくださる書店(もしくはその他のスペース)をお持ちの方は、
hello[ATMARK]numabooks.com もしくは@numabooksまで、お気軽にご連絡ください。

6/17(日)
お相手:松島倫明さん(WIRED日本版新編集長)
場所:本屋B&B(東京・下北沢)


6/29(金)
お相手:辻山良雄さん(本屋Title店主)
場所:本屋Title(東京・荻窪)


7/1(日)
お相手:北島勲さん(手紙社代表)
場所:本とコーヒーtegamisha(東京・柴崎)


7/4(水)
お相手:佐藤亜沙美さん(サトウサンカイ)
場所:青山ブックセンター本店(東京・表参道)


7/10(火)
お相手:安村正也さん(Cat's Meow Books店主)
場所:TSUTAYA三軒茶屋店(東京・三軒茶屋)


7/27(金)
お相手:堀部篤史さん(誠光社店主)
場所:誠光社(京都・河原町丸太町)


8/24(金)
お相手:鹿子裕文さん(編集者、著書『へろへろ』(ナナロク社)など)
場所:カフェ&ギャラリー・キューブリック(福岡・箱崎)


8/25(土)
お相手:白川貴浩さん(本書編集担当、NHK出版)
場所:ひなた文庫(熊本・南阿蘇)


9/15(土)
お相手:早坂大輔さん(BOOKNERD店主)
場所:MORIOKA BOOK CAMP@盛岡市中央公園(岩手・盛岡)


9/16(日)
お相手:荻原貴男さん(REBEL BOOKS店主)
場所:REBEL BOOKS (群馬・高崎)


10/7(日)
お相手:中村勇亮さん(本屋ルヌガンガ店主)
場所:本屋ルヌガンガ(香川・高松)


10/8(月)
お相手:吉村祥さん(FOLK old book store)、三砂慶明さん(梅田 蔦屋書店)、中川和彦さん(スタンダードブックストア)
場所:スタンダードブックストア心斎橋(大阪・心斎橋)


10/15(月)
お相手:渡邉朋也さん(美術作家)
場所:Bookstore松(山口・道場門前)


11/7(水)
お相手:古田一晴さん(ちくさ正文館)、黒田義隆さん(ON READING / ELVIS PRESS)
場所:丸善名古屋本店(愛知・名古屋・栄)


11/17(土)
場所:NABO(長野・上田)